低濃度（微量）PCB廃棄物は、処理費用を安く抑えられるか？

PCBにかかる費用は処分費と運搬費があります。処分費も運搬費も処理業者やPCB廃棄物の種類によって大きく違いますが、運搬費だけでも保管事業者様が自ら運んで（自社運搬）、廃棄費用を安く抑えようと考える方もいるのではないでしょうか？

PCB廃棄物と申しましても、実に様々な種類がありますが、大きく分けますと高濃度PCB廃棄物と低濃度（微量）PCB廃棄物の2つに分類されます。高濃度PCB廃棄物の運搬に関しては、自社運搬が極めて難しいので、ここでは省略させていただき、ここでは低濃度（微量）PCB廃棄物の自社運搬が可能なのか又は、果たしてその再現性があるのか否かを解説させていただきます。

結論から申し上げて、自社での低濃度（微量）PCB廃棄物の運搬は可能ですが、コスパが悪いのでお勧めしません。

PCB収集運搬ガイドラインというものが環境省から発行されておりますが、ガイドラインに沿って運ぶためには運搬容器、もしものときの回収用具など、いろいろと用意するものがあります。特別管理産業廃棄物管理責任者を選任し、このガイドラインを満たすことができ、且つ受け入れ処分業者から承諾を得ることができれば、保管事業者様が自ら運ぶ自社運搬は、可能です。ただし、万が一、交通事故などによりPCBが漏れ出した場合の原状回復に要する費用は、運んでいる方の負担になりますので、注意が必要です。原状回復に要する費用は、当然程度によりますが、仮に2000リットル（ドラム缶10個分）のPCBが道路に漏れ出した時には、その道路の分析費、アスファルト・コンクリートの斫り費と廃棄等で数千万円程度かかると予想できます。さらにPCBが側溝などに流出し、田畑などの土壌汚染を招いてしまえば、1億円以上もの原状回復費がかかってくるでしょう。ですから万が一に備えてPCBの損害賠償責任保険に加入しなければなりませんし、PCBの処分場では、この保険の加入が無ければ受け入れを承諾しないところがほとんどです。PCBの処理は、それらを漏らさず安全に処分場まで運ぶことだけでなく、その安全性をいかに担保できるかが本来の目的であるともいえます。さらに、安全性の担保は、損害賠償責任保険だけでなく、適正な委託契約書やマニフェストの運用、運搬車両の標識から積み方、そこで働く作業員の労働安全衛生上の管理など、取り組まなければならないことは多岐に渡り、しかもそれらは全て記録（エビデンス）として残しておかなければなりません。これらが守られていないと法律に抵触することになりますので、罰則を受けることになり、大きなリスクを自社で背負うことになります。つまり、自社運搬はリスクやかかる費用の割に、コスパが悪いと言えます。もちろん運搬コストは、PCBの収集運搬許可業者によって異なりますから、一概に言えませんが、安いからと言って運搬業者を選定するのも危険です。万が一その運搬業者が責任を負えないくらいの事故になった時、排出事業者責任として、発注者である保管事業者様が責任を取らされてしまう可能性もあるからです。

電力機器の解体実績ときちんと責任が負えるPCBの許可業者を選定するべき

ですから事前にPCB許可業者の運搬費だけでなく、PCB含有機器の解体・運搬の実績や、責任を負えるだけの損害賠償責任保険の加入状況・財務基盤を確認しておく必要があるのです。ちなみに、PCB含有の大きい変圧器（特高）、コンデンサなどの電力機器などは液抜き、取り外し、解体などは、一朝一夕では身につかない専門技術を要するので、簡単に運搬することはできないでしょう。